医療のお話の記事一覧Category entries

アメリカ獣医救命救急専門学会による修了認定証取得

病院長はVeterinary Emergency and Critical Care Society(獣医救命救急医療学会)とAmerican College of Veterinary Emergency and Critical Care(アメリカ獣医救命救急医療専門学会)の共同プロジェクトであるRECOVER(獣医蘇生再評価運動)の実技講習を修了し、American College of Veterinary Emergency and Critical Care の認定証を取得しました。また、水越麻希子副院長、中塚千枝勤務獣医師もWEB講習を受講し修了証を取得しました。

ガイドラインに沿った心肺蘇生の方法を見直し徹底することで、心肺停止に陥った犬や猫の救命率を少しでも上昇させたいと思います。心肺蘇生は医療スタッフチームによる日々のトレーニングと各個人の日々の意識が重要になります。スタッフ一同、懸命に取り組んでいきたいと思います。


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医療のお話|水越 崇博|2018年06月20日

台湾での犬の心臓外科手術

こんにちは。
めっきり寒くなりました。
風邪などひかないように暖かくして過ごしてください。

今回は台湾で行ってきた犬の僧帽弁閉鎖不全症に対する心臓外科手術についてご報告します。
台湾の台北市街地南西の新北市というところにある左岸動物病院にて
犬の帽弁閉鎖不全症の2症例に対し手術を行ってきました。
普段JASMINEどうぶつ循環器病センターにて手術助手、麻酔管理、器具助手、人工心肺装置管理のお手伝いをしていますが今回私は人工心肺装置の操作を行っていきました。

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左岸動物病院外観 川岸に立つ広い病院です。バイク多いです・・・

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手術室はとても広く清潔で人の病院のように2階から見ることができます。

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これが人工心肺装置です。たくさんのローラーポンプと人工肺、熱交換器を
カテーテルでつなぎ、心臓を止めている間心臓と肺の代わりをします。
術中常に執刀医、麻酔医と連携をとり血液量、血圧、水分量、体温等を調整する重要なお仕事です。

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今回参加したお馴染みJASMINEの先生達と台湾の先生、めい動物病院の竹内院長です。

私は今回初めて台湾に行きましたが台北市はとても近代的で
病院もとてもきれいで驚きました。
獣医師の先生達もとても勉強熱心で今回もいい刺激になりました。

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それにしてもバイクが多い・・・
スクーターに犬を乗せていて赤信号で止まると犬が降りてその辺をうろちょろして青になると
またぴょんと飛び乗って・・・
とても衝撃的でした。

医療のお話|水越 崇博|2017年11月15日

トイプードル、ティーカッププードルの動脈管開存症(PDA)の手術

動脈管開存症PDAに対する開胸下動脈管結紮を行った頑張ったワンちゃん達をご紹介します。

神奈川県大和市在住の3歳のメスのトイプードルで体重は2.6kgでした。
動脈管開存症は生後まもなくから比較的大きな心雑音が聴取されることが多いため
このワンちゃんは比較的発見が遅かった子です。
超音波検査において動脈管開存に加え肺動脈弁逆流も認められました。
手術は無事成功し1カ月後の検診では肺動脈弁逆流は少し残存しているものの
動脈管の短絡血流は認められませんでした。

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次の子は埼玉県戸田市在住の3カ月齢のオスのティーカッププードルで体重は1kgでした。
2回目のワクチン接種の時に心雑音を指摘され当院にて動脈管開存症と診断しました。
動脈管開存症と共に僧帽弁逆流症MRおよび三尖弁逆流症TRも併発しておりました。
手術は無事成功し1カ月後の検診では動脈管短絡血流は消失し僧帽弁逆流症も減少していました。
心臓血液マーカーの値もほぼ正常値に戻っていました。
その後かかりつけの病院さんで去勢手術および大腿骨頭切除の手術を受けられたそうですが
心臓の状況も安定しており麻酔も問題なくかけられたみたいです。

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術後1週間の頑張ったプードルちゃん
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今回も都外より当院のブログをご覧いただきご来院頂きありがとうございました。
また初めての病院ですが信用していただき大切なワンちゃんを預けて頂きありがとうございました。
動脈管開存症は手術に成功すれば寿命を全うできる先天性心疾患です。
少しでもその手助けができたら幸いです。

池上アクア動物病院
病院長

医療のお話|水越 崇博|2017年07月11日

1月のフランスでの心臓外科手術

こんにちは。寒い日が続いていますね。体調を崩されてはいないでしょうか?
1月23日~1月30日で病院をお休みし皆様には大変ご迷惑をお掛け致しました。ご協力ありがとうございました。
フランスでの心臓外科手術に関してご報告させて頂きます。

今回もCLINIQUE VETERINAIRE BOZONという病院で犬の僧帽弁閉鎖不全症に対する弁形成術を5件、猫の三尖弁形成不全に対する弁形成術を1件行ってきました。
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<フランスのベルサイユにあるDR.Bozonの病院外観。雪が降っていました。>

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(手術を受けた動物達)

僧帽弁閉鎖不全症の5症例は無事手術も成功し順調に回復しているそうです。
三尖弁形成不全の猫ちゃんは手術自体はうまくいき術後の三尖弁の動きも良好でしたが
翌日に貧血が進行し残念ながら亡くなってしまいました。
JASMINEどうぶつ循環器病センターでの僧帽弁閉鎖不全症に対する弁形成術後の退院率は非常に高いですが
猫ちゃんでは術後に亡くなることが多く術後管理が非常に重要になってきます。
フランスでは術後管理は現地スタッフにお任せするのですが
ワンちゃんも含めやはり心臓外科手術後の術後管理の難しさを痛感して帰ってきました。
通常当病院で手術および術後管理をしていて心臓外科ほどシビアな術後管理を行わなければならないケースは少ないですが
こういう経験をすることで気を付けなければならないポイントを見落とさないこやもしもの時の対応力が養われる気がします。

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(執刀医のJASMINEどうぶつ循環器病センター、センター長の上地先生と助手の私)

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(左から私、JASMINEの高村先生、ウチダ動物病院の内田先生、北の森動物病院の沢田先生、JASMINEの原田先生、JASMINEの上地先生)

今回も手術の手技・テクニックはもちろん、周術期麻酔、術後管理などたくさんのことを勉強して帰ってきました。
学んできた情報を病院内で共有し、スタッフ全員で今後の診療に生かしていきたいと思います。

池上アクア動物病院
病院長

医療のお話|水越 崇博|2017年02月04日

チェリーアイ(第三眼瞼突出)

こんにちは。
今回はチェリーアイに関してご説明いたします。

<第三眼瞼とは>
犬の目の目頭には眼球とまぶたの間に3つ目の眼瞼(まぶた)があります。この3つめのまぶたのことを第三眼瞼あるいは瞬膜と呼んでいます。第三眼瞼は上まぶた越しに眼球を目頭方向に押してあげると目頭の部分から目を覆うように出てきます。第三眼瞼は、角膜の上に付着したゴミを払いのけるワイパーの役割をしています。また、第三眼瞼の中には瞬膜腺という涙をだす腺組織を含んでいます。瞬膜腺から出てくる涙液量は涙全体の30%程度を占めています。第三眼瞼の中にはT字型の軟骨が入っており、この瞬膜腺を抑え込むような構造になっています。また、瞬膜腺は周囲の骨組織と結合組織により付着して第三眼瞼の中で固定されています。

<チェリーアイ・第三眼瞼突出>
遺伝的に瞬膜腺と周囲骨組織等の結合組織が欠損している、あるいは結合組織の発達障害により瞬膜腺の固定が不十分となり、瞬膜腺が第三眼瞼ごと反転して上下まぶた辺縁よりも前方に飛び出してしまった状態をチェリーアイあるいは第三眼瞼突出と言います。軽度な場合には突出した瞬膜腺を押し戻したり、消炎剤の点眼で元の位置に戻すことが可能ですが、長時間突出している状態が続くと瞬膜腺を抑え込んでいるT字軟骨がU時に湾曲して変形するため元に戻せなくなってきます。突出した瞬膜腺はさまざまな刺激にさらされるようなるため炎症を起こし、赤く腫れ炎症や充血を起こすようになります。チェリーアイは両側性に起きることも多いです。

<罹患しやすい犬種>
ビーグル、コッカースパニエル、ボストンテリア、フレンチブルドック、シーズー、バセットハウンドなど。
1歳未満で発症することが多く、両眼性でみられることが多いです。

<治療>
軽度の場合には、突出した瞬膜腺を綿棒などで押し込んであげると元に戻ります。また、消炎剤の点眼薬により戻ることもあります。感染を起こしている場合には抗生剤の点眼薬を使用します。
突出を繰り返したり、T字軟骨の変形を起こしている症例では瞬膜腺が再度脱出しないように手術を行います。手術はアンカー法やポケット法、またはこれらを併用して行います。手術後の再発率は10~30%といわれています。

当院で実施したビーグルの症例。T字軟骨切開とポケット法にて修復しました。
反転して突出した瞬膜腺。
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ポケット法にて修復。支持糸により第三眼瞼を反転させて結膜にポケットを作りその中に突出した瞬膜腺を包埋して縫合します。
縫合面が眼球側に来るので縫合糸や結紮部位が角膜損傷を起こさないように注意しながら細い糸で縫合します。
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術後は突出が整復されました。現在も術後再発することなく経過しています。
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以前は手術により突出した瞬膜腺を切除していたようですが、瞬膜腺は全涙液の30%を担っていますので、切除によりドライアイを呈する可能性があります。よって、現在は瞬膜腺の切除は行わず瞬膜腺を残した手術法が選択されています。


池上アクア動物病院
病院長

医療のお話|水越 崇博|2016年02月11日

胆嚢粘液嚢腫による胆嚢摘出術

こんにちは。
今回は胆嚢粘液嚢腫および胆嚢摘出術による外科治療に関してご説明します。

<胆嚢と胆汁>
肝臓で作られた胆汁は肝臓内の細い胆管と呼ばれる管で集められた後、肝管と呼ばれる管を通って胆嚢に集められ貯蔵されます。胆嚢に貯蔵された胆汁は胆嚢から十二指腸に続く胆嚢管・総胆管を通って十二指腸内に分泌され食餌中の脂質の分解・吸収に役立てられています。胆嚢内で胆汁は20~30倍に濃縮されます。

正常な胆嚢の超音波所見。楕円形の黒い部分が胆嚢。胆嚢内の胆汁は真っ黒に映ります。
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胆泥が溜まった胆嚢の超音波所見。胆嚢内右側にグレーの堆積物が確認されます。
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<胆嚢粘液嚢腫>
加齢とともにみられる胆嚢の運動性低下や高コレステロール血症、副腎皮質機能亢進症や甲状腺機能低下症などの内分泌疾患の結果胆汁の過剰濃縮が起き、胆石や胆泥が形成されるようになります。これらの刺激により胆嚢内における粘液生成が過剰になります。胆嚢粘液嚢腫とは胆嚢内にこの粘液が増加し、ゼリー状に変化することで胆汁うっ滞が起き胆嚢が拡張している病態を指します。胆嚢粘液嚢腫の状態が長く続くと拡張した胆嚢壁の血流が不十分となることで胆嚢壁が壊死し避けることで胆嚢内容物が腹腔内に流出するようになります胆嚢破裂)。すると胆汁性腹膜炎を生じてきます。また、胆泥やゼリー状物質などにより総胆管が閉塞すると胆汁うっ滞性の黄疸を示すようになります。

当院で確認された3頭の胆嚢粘液嚢腫の超音波画像です。どの症例も見たような所見になっています。
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<症状>
元気消失、食欲不振、腹部疼痛、嘔吐、発熱、黄疸など。

<好発犬種>
高脂血症を起こしやすい犬種。シェルティー、シュナウザー、シーズー、コッカースパニエル、ビーグルなどの中高齢犬。

<治療>
胆嚢が壊死・破裂を起こし胆汁性腹膜炎を呈している場合には外科手術による胆嚢摘出術が選択されます。
胆汁流出がなく症状がない場合、あるいは初めての症状で支持療法による改善がみられる場合には内科療法が行われます。利胆剤、抗生剤の投薬と低脂肪食が推奨されています。また基礎疾患として内分泌疾患を罹患している場合にはこれらについても治療していくのが良いでしょう。しかし結果的に胆管閉塞や胆嚢破裂を起こすことも多いため早期の胆嚢摘出術を推奨する獣医師も多いです。高齢に加え胆嚢破裂による重度腹膜炎等により全身状態が悪いことが多くDICや多臓器不全に陥りやすいため、胆嚢摘出術後の生存率は60~80%と言われており、術中、術後に亡くなることも非常に多い疾患です。

当院で実施した胆嚢摘出症例です。胆嚢破裂によりゼリー化した胆泥が腹腔内に散在(腹腔内下方にある黒いつぶつぶ)しています。
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拡張した胆嚢(上の薄黒)と腹腔全体に拡がる強い腹膜炎(炎症により全体的に赤)の所見が確認できます。
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胆嚢周囲にはさらに多くのゼリー状物が確認できます。
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摘出した胆嚢です。幸い本症例は回復し現在も元気に過ごしています。
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<予防>
7歳を越えるシニア期に入ってきたら定期的な健康診断を実施し、血液検査、腹部超音波検査により胆泥症の段階で早めにケアしていくことが重要となります。また、肥満予防など食事管理も非常に大切です。

池上アクア動物病院
病院長

医療のお話|水越 崇博|2016年02月05日

MIX(マルチーズ×トイプードル)、コーギー、チワワの動脈管開存症PDAの手術

当院にて3~6例目となる動脈管開存症(PDA)の手術をしたワンちゃん達をご紹介いたします。

川崎市在住のマルチーズとトイプードルのMIX犬、3カ月齢の雄のワンちゃんで体重は1.3kgでした。
術後3カ月の検診では、術前から認められていた軽度の三尖弁逆流と肺動脈弁逆流は認められるものの動脈管短絡血流は認められませんでした。
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柏市在住のウエルッシュ・コーギー、2カ月齢の雌のワンちゃんで体重は2kgでした。
術後の検診では、術前に認められていた僧帽弁逆流は消失し動脈管の再疎通もなく順調に経過し、術後4カ月で避妊手術も行い元気に退院していきました。
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横浜市在住のマルチーズとトイプードルのMIX犬、3カ月齢の雌のワンちゃんで体重は2.1kgでした。
術後の検診では術前から認められていた軽度の三尖弁逆流と肺動脈弁逆流は認められるものの動脈管の再疎通はなく順調に経過し、術後3カ月で妊手術を行い元気に退院していきました。
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御殿場市在住のチワワ、4カ月齢の雌のワンちゃんで体重は1kgでした。
体重420gの時点で診察させて頂きましたが低体重による麻酔のリスクがありましたので体重増加に努めていただき1kgの時点で手術を実施しました。
術後肺動脈弁逆流が認められましたが元気に経過しています。
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当院のブログをご覧いただき遠い所からご来院いただき有り難うございます。
少しでも心臓病で苦しむ動物達の手助けができたら幸いです。

池上アクア動物病院
病院長

医療のお話|水越 崇博|2016年02月04日

シンガポールでの犬の心臓外科手術

こんにちは。
寒い日が続きますが体調など崩してはいないでしょうか?

昨年末にJASMINEどうぶつ循環器病センター研究員として参加してきたシンガポールの動物病院「Animal Recovery Veterinary Referral Centre]での心臓外科手術に関してご報告いたします。
シンガポールは物価も高く家賃も高いため犬を飼育できるのは一軒家に住んでいる富裕層のようです。
今回JASMINEどうぶつ循環器病センターに心臓外科の依頼をした病院はシンガポールでも人気のある病院です。
いやしかし12月だというのに半袖半ズボンでも汗ばむ陽気でした。

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<Animal Recovery Veterinary Referral Centreの外観>

今回は2頭の僧帽弁閉鎖不全症の犬に対し体外循環を用いた弁形成術を行ってきました。
ちょっと臆病なチワワちゃんとおとなしいMIXのワンちゃんでした。

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<JASMINEどうぶつ循環器病センターの原田先生とシンガポールスタッフのみなさん>

慣れない環境での手術は準備等に戸惑いも多いですが始まってしまえば集中するだけです。
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<手術風景 左がJASMINEどうぶつ循環器病センター長で執刀医の上地正実先生 助手が私>

手術は無事に終わり術後のケアは現地スタッフに引継ぎしました。

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<手術後のチワワちゃん>

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<左からJASMINEの水野先生 原田先生 上地先生 私 研究員(北の森動物病院院長)沢田先生>

ところ変われば器具機材も使用薬剤も違ったりします。
郷に入っては郷に従うことの大切さがわかります。
やりやすさやりづらさ、いろんな経験が私たちをより豊かにしてくれるのだとつくづく感じました。
以上、シンガポール出張でした。

池上アクア動物病院
水越 崇博

医療のお話|水越 崇博|2016年02月04日

フランスでの心臓外科

こんにちは。
先日の休診中は皆様に大変ご迷惑をお掛け致しました。
心より御礼申し上げます。

さて、今回のフランスでの心臓外科手術に関してご報告させていただきと思います。
私も研究員として所属しているJASMINEどうぶつ循環器病センター所長の上地先生にフランスの獣医師から心臓外科手術の依頼があり
キャバリアの僧帽弁閉鎖不全症に対する弁形成術の助手としてお手伝いをしてまいりました。
今回はフランスのベルサイユにあるCLINIQUE VETERINAIRE BOZONという獣医師のご夫婦で開業されている病院に行ってきました。IMG_20150707_081120.jpg
<病院の前にて。写真はJASMINE動物循環器病センターの高野先生>

個人病院とは思えない程、設備が充実しておりました。
フランスの獣医師の人達もとても協力的で手術の行いやすい環境でした。
手術はとても順調に進み無事に終了することが出来ました。

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<術後の様子>

術後すぐから安定し酸素室での表情も良好でした。

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<術後のワンちゃんの様子>

海外遠征手術は私にいつも経験と知識と刺激を授けてくれます。
また、1つのどうぶつの命のために世界の獣医師と協力する喜びも与えてくれます。
国は違えど思いは同じだということを実感することができます。
今回のフランス出張でも貴重な体験ができました。
皆様へ還元できるように今後も頑張りたいと思います。
以上、フランス出張でした。

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<フランスの先生たちと>


池上アクア動物病院
水越 崇博



医療のお話|水越 崇博|2015年08月07日

会陰ヘルニア

会陰ヘルニアは、比較的高齢の未去勢の雄犬に多く認められる疾患で、肛門から臀部にかけての筋肉群が薄くあるいは細くなり脆弱化が起こることで筋肉が裂けたり筋肉と筋肉の間に隙間ができ、そこから膀胱や前立腺、消化管、脂肪などの腹腔内の臓器が骨盤腔を通して皮下に飛び出してきてしまう疾患です。未去勢の雄犬に多いことからホルモンバランスの乱れに起因することが示唆されていますが、その他遺伝的要因、腹圧が上がる病態(慢性下痢、巨大結腸症、慢性的な発咳、排尿障害や便秘などによるしぶり等)による要因、筋肉が脆弱化する病態(副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能低下症など)による要因も言われています。

会陰ヘルニアになるとヘルニア孔より出てくる臓器によって弊害が出るようになります。膀胱や前立腺が出ることにより排尿障害が生じたり、直腸憩室が形成されることによる排便障害が生じることがあり、重度な症例では排尿障害より尿毒症を続発し手遅れになる場合もあるため手術が推奨されます。

会陰ヘルニアの手術にはさまざまな方法が考案され実施されています。大きく分けてヘルニア孔周辺の筋肉縫縮、筋肉転移術、総鞘膜転移術(総鞘膜とは精巣を包んでいる膜です)など自己の生体内組織を利用した整復方法と、シリコン製の会陰プレートやポリプロピレンメッシュなどの人工材料を用いて孔を補填する整復方法とがあります。しかし、どの方法を選択しても30~60%程度の再発が生じるといわれています。筋肉の脆弱化は進行性の場合も多いため、再発率を低下させる意味でも手術は出来るだけ早い段階で行うことが望まれます。未去勢の雄犬の罹患が多いので、当院では総鞘膜転移術を好んで行っています。

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先日当院で手術を行ったヨークシャーテリアは、会陰ヘルニアでは珍しくメスの子でした。両側性の会陰ヘルニアでしたが、術前の検査の結果、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)であることがわかりました。副腎皮質機能亢進症では身体の中のグルココルチコイドが過剰な状態ですが、この影響により術創の治りが遅くなったり感染しやすいという特徴を持っています。人工材料を用いたヘルニア孔の閉鎖術は簡便であり、比較的大きなヘルニア孔にも対応できるという利点がある一方で、生体にとっては異物であるため炎症反応や感染を起こしやすいという欠点も持ち合わせています(もちろんすべての症例で必ず炎症や感染が起きるというわけではありません)。そこで、今回は内閉鎖筋フラップ術という方法で整復しました。内閉鎖筋という骨盤に付着する筋肉を剥離反転し、外肛門括約筋、尾骨筋、肛門挙筋、浅臀筋、仙結節靱帯とともに縫合してヘルニア孔を閉鎖する方法です。

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矢印の部位が腫れているのが分かります。この子の場合膀胱が出てきていました。

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肛門の脇を切開後膀胱を腹腔内に戻すと大きなヘルニア孔が確認されました。

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骨盤より内閉鎖筋を剥離し縫着しているところです。

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両側整復を行いました。

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術後の経過は良好で無事抜糸も終わり現在のところ再発もしておりません。

この子の場合副腎皮質機能亢進症が筋肉を脆弱化させそれによりヘルニアが発症したと考えられるため、これに対する内服の治療は継続していく必要があります。会陰ヘルニアはなるべく早く手術することにより再発率を低く抑えることが可能であると考えられています。未去勢の雄犬で肛門の脇に膨らみを感じたらお早目に動物病院にご相談ください。

 

 

医療のお話|水越 崇博|2014年02月06日

本院2例目の動脈管開存症

先日本院においては2例目となる動脈管開存症の手術を行いました。

患者さんは練馬区在住の3ヵ月齢のオスのトイプードルで体重は2kgでした。

近医にて心雑音を指摘され手術のために当院をご来院されました。

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心雑音は動脈管開存症では特徴的な連続性の雑音でした。

連続性の雑音とは「トンネルの中を新幹線が走っているような音」と表現されたりします。

心臓超音波検査では肺動脈内に肺動脈弁に向かう流速5m/秒程度の短絡血流が認められました。

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手術では前回の症例に比べ体重が2kgとやや大きく術野も多少大きくとれました。

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動脈管の太さは前回の症例より太く直径で1cmほどありました。

手術の手順は前回と同様2本の糸と1本のテープ糸を動脈管に通して結紮しました。

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動脈管の手術中は股動脈より観血的に動脈圧をモニターしておりますが、

動脈管を結紮すると大動脈から肺動脈に短絡していた血流分の血圧上昇が認められます。

この子は85mmHgから97mmHgまで血圧が上昇しました。

手術は無事成功し心雑音は消失しておりました。

術後2日目に元気に退院していきました。

術後1週間で抜糸にいらっしゃいましたがお家では元気にしているとのことでした。

 

院長 

医療のお話|水越 崇博|2013年11月19日

ロンドンでの心臓外科

こんにちは。

先日の休診中は皆様に大変ご迷惑をお掛け致しまして申し訳ありませんでした。

皆様のご協力に感謝いたしております。

今回のロンドンでの心臓外科手術に関するご報告をしようと思います。

イギリスのロンドン郊外にあるRoyal Veterinary College(RVC)付属の

Queen Mother Hospital for Animalsで僧帽弁閉鎖不全症の弁形成手術を行いました。

大学は緑豊かな広大な敷地にあり、校舎も新しくとてもきれいでした。

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敷地内には馬や羊、牛などが放し飼いにされており、とても開放的な感じでした。

また、野ウサギがとてもたくさん敷地内を走り回っていました。

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病院も広く、清掃がいきわたっており清潔感のある病院でした。

執刀医である上地教授と病院の前で撮りました。

貴重な勉強や体験をさせていただいている教授にはいつも感謝しております。

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今回の症例は僧帽弁閉鎖不全症を患う11歳のジャックラッセルテリアでした。

肺水腫を繰り返し、左心房の拡大も著しい予想以上に重度な僧帽弁閉鎖不全症でした。

手術中の風景です。

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弁形成術は人工心肺装置を用いて心臓を一時的にとめて行います。

心臓の処置が終了したのちに再び心鼓動を再開させるのですが、

いつもこの瞬間がドキドキします。

人工心肺に用いるローラーポンプの写真です。

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幸い手術は無事に成功しました。

術後管理はRVCの集中治療チームにお願いしました。

その後も順調に回復し、術後1週間で元気に退院したとのことです。

今回頑張ってくれた手術直後のハイジちゃんです。

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協力していただいたRVCの手術スタッフと私たちのチームで撮りました。

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上地教授が率いる私たちの心臓外科チームは、

過去に2度アメリカ(ミシガン、ジョージア)にて手術を行いました。

今回のイギリスは3度目の海外出張手術でしたがたくさんのことを学んできました。

また、世界の獣医師と話をすることでとても刺激を受けて帰ってきました。

この経験を皆様に還元できるように日々勉強、日々努力をして頑張りたいと思います。

今後もシンガポールでの手術を予定しております。

皆様にはご迷惑をお掛けすることもあると思いますが、

今後とも何卒ご協力の程よろしくお願いいたします。

 

池上アクア動物病院 院長 水越 崇博

医療のお話|水越 崇博|2013年08月29日

循環器診療

こんにちは。

池上アクア動物病院、院長の水越です。

獣医循環器学会の認定する獣医循環器認定医になり1年が経ちました。

おかげさまで大田区を中心に、世田谷区、目黒区、中央区、品川区、江戸川区、板橋区、川崎市、茨城県など

東京都内外より循環器診療に関するセカンドオピニオンのお問い合わせを数多くいただけるようになってきました。

お電話にてご相談をお受けしたり、実際に来院してくださり診察させていただくなかで、

あらためて心臓疾患に苦しんでいる犬や猫がたくさんおり、

また「心雑音があります」、「心臓病です」と言われて大きなご不安を抱え

お悩みしている飼い主様が数多くいらっしゃることが再認識させられます。

一方で、検査の結果実際には心臓に問題がなく大変安心されてお帰りになっていく方もいらっしゃいっます。

不安とは正体のわからない(自分の容量を超えた)事柄に対して先が見えず問題解決の糸口が見つからないという

その事柄に対する情報が圧倒的に少ない状態でその状況を思考した際に感じる心の動きです。

ですから不安を少しでも軽減させる唯一の方法は病気に対する正しい知識を持つことです。

そうすることで現在の状況や予後を把握できるようになりそのうえで治療法を判断・選択できるようになるのです。

私たちはその正しい知識や現在の状況を把握する手助けをさせて頂いています。

簡単な言葉でなるべく分かりやすく説明するように心がけておりますが、

少しでも分からないことがあれば是非とも質問してご理解を深めてください。

些細なことでも気後れせずお気軽にご相談していただければ幸いです。

 

現在、犬の僧帽弁閉鎖不全症(僧帽弁逆流症、慢性弁膜症)や不整脈、先天性心疾患、猫の肥大型心筋症など

飼い主様とご相談しながら治療法を決定し内科療法を中心に治療を行っております。

また、心疾患の治療法の選択肢の一つのとして心臓外科手術も提案させて頂いております。

私は先天性心疾患や僧帽弁閉鎖不全症などの心臓外科手術を行う動物循環器病研究会チームの一員でもあり、

日本大学における心疾患の根治術である心臓外科手術のご相談も随時お受けしております。

術前、大学における手術、術後と一貫して大切なペットのケアをさせて頂きます。

心臓の手術に関してもお気軽にお問い合わせください。

 

皆様のお力になれるよう今後も勉強を続けて参りたいと思います。

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(当院における動脈管開存症の手術風景)

 

医療のお話|水越 崇博|2013年06月28日

動脈管開存症の開胸手術

先日、3カ月齢のマルチーズ(体重1kg)の動脈管開存症の開胸外科手術を行いました。

手術後は順調に回復し、心雑音もすっかりなくなり元気に退院していきました。

 

今回はその動脈管開存症についてご紹介しようと思います。

 

動脈管開存症は犬の先天性心疾患の中では最も一般的な心臓病であると言われていますが、

近年では非常に少なくなってきており動脈管開存症の犬に遭遇する機会も少なくなってきているように思われます。

好発犬種としては、マルチーズ、ポメラニアン、ミニチュアダックスフンド、トイプードル、ヨークシャーテリアなどがあげられます。

 

では動脈管開存症とはどういう病態なのでしょうか。

仔犬がまだお腹の中にいる胎児の時には呼吸による酸素と二酸化炭素のガス交換を行っていないため、

肺に血液を送る必要があまりありません。

そこで胎生期の仔犬には大動脈と肺動脈をつなぐバイパス血管あり、

心臓から肺動脈に送られた血液はこのバイパス血管を通じて大動脈に流れ込み、

肺を介さずに全身に多くの血液を送ることができるようになります。

このバイパス血管が動脈管です。

出生後には呼吸をして肺でガス交換を行うようになるため、

必要無くなった動脈管は生後3日の内に退縮して閉鎖します。

 しかし、血中プロスタグランジンの量や酸素などの影響により、

これが閉鎖せずに残ってしまったものが動脈管開存症という病気です。

 

<正常な構造>

正常.png

 

<動脈管開存症の構造>

 動脈管.png

 

動脈管が残存していると、

左心室から大動脈に送られた血液の一部が血圧の低い肺動脈に流れ込むことで肺の血流が増加し、

結果として肺から左心房に帰ってくる血液量が増加するため

左心房や左心室に多くの負担がかかってしまいます。

そのため左心不全を起こしてしまいます。

また、過剰な血液が流れ込む肺の血圧は高くなるために血管は動脈硬化を起こし、

肺のうっ血、さらには右心系のうっ血を呈するようになり最終的には右心不全を起こすようになります。

 

<動脈管開存症の血液の流れ>

PDA血流.png

 

動脈管開存症の症状は、初期ではほとんど症状を示さず元気なことが多いです。

そのために発見が遅れることがあります。

しかし、成長とともに発咳や運動を嫌がる、疲れやすいなどの症状がみられるようになり、

1歳を過ぎるとうっ血性心不全や肺水腫、腹水などを呈するようになります。

残存する動脈管の太さにもよりますが、多くの場合3歳までに亡くなってしまいます。

 

それでは実際の症例で外科的治療に関してご紹介しようと思います。

 

今回の患者さんは2カ月齢のマルチーズの女の子です。

ワクチン接種時に心雑音を指摘され本院に来院されました。

本人に症状はなく元気いっぱいでした。

しかし、聴診を行うと大きな雑音が聴取されました。

DSC_0062.JPG

 

動脈管開存症に特徴的な心雑音が聴取されましたので心臓検査を実施しました。

検査には、胸部レントゲン検査、心電図検査、心臓超音波検査、血液検査を実施しました。

心臓超音波検査では肺動脈内に流れ込む異常な血流をカラーで描出することができます。

Image02.jpg

以上の検査をもとに動脈管開存症と診断し、手術を行いました。

手術時には3カ月齢の1.2kgになっていました。

 

動脈管間存症の手術は、開胸して動脈管を結紮することで行います。

開胸といっても術野の大きさは人差し指と親指で丸を作った程度の大きさしかなく、

その中でそれぞれの太さが6mm程度しかない大動脈、肺動脈、動脈管を慎重に分離し、

非常に破れやすい組織の動脈管を破れないようにゆっくり3本の糸で縛っていく必要があるため、

手術の難易度は非常に高くなります。

 

<動脈管に3本の糸を通したところ>

DSC_00831.jpg

<動脈管を結紮したところ>

DSC_0086.JPG

 

術後は順調に回復し、

その日のうちに少量のご飯を食べれるまでになりました。

聴診上心雑音は消失し、超音波検査上も異常血流はなくなっていました。

術後2日目に元気に退院していきました。

 

 

動脈管開存症は早期から大きく特徴的な心雑音が聴取できることから、

新たに仔犬を買い始めたらまず動物病院で身体検査を受診することをお勧めします。

そして、動脈管開存症と診断されたらできるだけ早期に手術を行うことが必要です。

そうすることでその後の一生涯を普通のワンちゃんと同じように生活することができるようになります。

 

 

当院では循環器疾患の診療に特に力を入れております。

また、現在でも大学に籍を置き先天性心疾患および僧帽弁閉鎖不全症の体外循環を用いた外科的根治術の

手術チームの一員としても活動しております。

先天性、および後天性の心疾患、高齢の小型犬に多いとされる僧帽弁閉鎖不全症、猫の心筋症など

心臓病でお悩みの方、お気軽にご相談ください。

 

池上アクア動物病院

     院長  水越崇博

 

医療のお話|水越 崇博|2012年11月02日

もうすぐ夏ですね

 

今日はいいお天気ですね。

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夏は、色々なイベントがありますね、花火大会、盆踊り、海水浴、キャンプ等々・・

どれも大切なペットと共に過ごせる楽しいイベントですが、時には不安になったり、怖がらせてしまう事も(>_<)

 

この時期の雷や台風、花火などはワンちゃん、猫ちゃんたちにとっては大きな音がするため

ストレスをためてしまう事があります。

また、不特定多数の人に出会う盆踊りや海水浴等も同様のことが言えます。

こんな様子に気づいたことはありませんか?

 

・雷や風雨の音がすると震えたり、ハァハァしてしまう。

・慣れていない場所に行くと急に全身にフケが出てしまう。

・足やパッドをひたすら舐めている。

・車に乗るとよだれが出たり、落ち着きがなくなる。

・外出先では抱っこをせがむ事が多くなる。

 

これらは、ほんの一部ですがペットたちの出しているヘルプのサインです。

症状がひどいと何とか不安なことから逃れようとして攻撃行動などに発展する事があります。

もし皆様の大切なパートナーにそのような様子が見られる場合は

少しでも不安を取り除くお手伝いができたらと思いますのでお気軽にご相談ください♪

 

 

 

 

医療のお話|水越 麻希子|2012年07月10日

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