チェリーアイ(第三眼瞼突出)

こんにちは。

今回はチェリーアイに関してご説明いたします。

<第三眼瞼とは>
犬の目の目頭には眼球とまぶたの間に3つ目の眼瞼(まぶた)があります。この3つめのまぶたのことを第三眼瞼あるいは瞬膜と呼んでいます。第三眼瞼は上まぶた越しに眼球を目頭方向に押してあげると目頭の部分から目を覆うように出てきます。第三眼瞼は、角膜の上に付着したゴミを払いのけるワイパーの役割をしています。また、第三眼瞼の中には瞬膜腺という涙をだす腺組織を含んでいます。瞬膜腺から出てくる涙液量は涙全体の30%程度を占めています。第三眼瞼の中にはT字型の軟骨が入っており、この瞬膜腺を抑え込むような構造になっています。また、瞬膜腺は周囲の骨組織と結合組織により付着して第三眼瞼の中で固定されています。

<チェリーアイ・第三眼瞼突出>
遺伝的に瞬膜腺と周囲骨組織等の結合組織が欠損している、あるいは結合組織の発達障害により瞬膜腺の固定が不十分となり、瞬膜腺が第三眼瞼ごと反転して上下まぶた辺縁よりも前方に飛び出してしまった状態をチェリーアイあるいは第三眼瞼突出と言います。軽度な場合には突出した瞬膜腺を押し戻したり、消炎剤の点眼で元の位置に戻すことが可能ですが、長時間突出している状態が続くと瞬膜腺を抑え込んでいるT字軟骨がU時に湾曲して変形するため元に戻せなくなってきます。突出した瞬膜腺はさまざまな刺激にさらされるようなるため炎症を起こし、赤く腫れ炎症や充血を起こすようになります。チェリーアイは両側性に起きることも多いです。

<罹患しやすい犬種>
ビーグル、コッカースパニエル、ボストンテリア、フレンチブルドック、シーズー、バセットハウンドなど。
1歳未満で発症することが多く、両眼性でみられることが多いです。

<治療>
軽度の場合には、突出した瞬膜腺を綿棒などで押し込んであげると元に戻ります。また、消炎剤の点眼薬により戻ることもあります。感染を起こしている場合には抗生剤の点眼薬を使用します。
突出を繰り返したり、T字軟骨の変形を起こしている症例では瞬膜腺が再度脱出しないように手術を行います。手術はアンカー法やポケット法、またはこれらを併用して行います。手術後の再発率は10~30%といわれています。

当院で実施したビーグルの症例。T字軟骨切開とポケット法にて修復しました。
反転して突出した瞬膜腺。
チェリーアイ術前.JPG

ポケット法にて修復。支持糸により第三眼瞼を反転させて結膜にポケットを作りその中に突出した瞬膜腺を包埋して縫合します。
縫合面が眼球側に来るので縫合糸や結紮部位が角膜損傷を起こさないように注意しながら細い糸で縫合します。
チェリーアイ術中.JPG

術後は突出が整復されました。現在も術後再発することなく経過しています。
術後.JPG


以前は手術により突出した瞬膜腺を切除していたようですが、瞬膜腺は全涙液の30%を担っていますので、切除によりドライアイを呈する可能性があります。よって、現在は瞬膜腺の切除は行わず瞬膜腺を残した手術法が選択されています。


池上アクア動物病院
病院長

|水越 崇博|2016年02月11日

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